後見業務
はじめに
例えば、夫が妻に自分のカードを使用して、銀行のATMからカードでお金をおろして来てくれと頼んだとします。この場合の法律関係は、夫は、妻に対して銀行のATMからカードでお金をおろしてくることを委任している、つまり、夫と妻の間には委任契約が成立していることになります。このように、自分以外の預金口座からお金をおろすには、預金口座の本人から委任を受けることが必要です。
そうすると、障がいや認知症等により、自分で正しい判断や意思表示が出来ない人は、自分の口座を他人に管理することを委任することは出来ませんので、誰も、その口座に手を付けることが出来ないということに注意が必要です。本人の財産は、本人が委任しない限り管理することは出来ないのです。仮に、本人の施設の利用料や費用の支払いに充てるといったケースのように、本人のためだからといっても勝手にお金をおろすことは問題があるということになります。
同様に、施設に入所するのはあくまでも本人ですから、子供が認知症の親に代わって施設への入所契約をすることは出来ません。まだまだ多くの施設において、子供や親族に契約書を書いてもらうことが多いようですが、施設の入所契約をすることについての委任を受けていない人と契約を締結しても代理権がありませんので、契約の段階では有効な契約にはならないということになります。
当事務所の体制
当事務所では、平成14年から後見人に就任してから、これまで113名の成年後見人等に就任し、令和5年4月現在、39名の成年後見人等(成年後見人29名、保佐人7名、補助人3名)に就任し、3名と任意後見契約を締結させていただき業務を行っています。ご本人様の状況は、在宅、入院、施設へ入所中といった居住条件が異なりますし、不動産を所有、保険、投資信託、借金といった管理する財産の状況も異なりますので、一律の対応をすることが出来ません。そして、日々、入院費用の請求領収書、施設の利用料の請求領収書、ヘルパーの利用料の請求領収書、本人の小遣いの明細、年金の振込通知書といった書類が多数郵送されてきます。自宅を所有していたが、現在は空き家になっていたり、農地を所有して耕作が出来ていない場合は、草刈り等の管理が必要な人もいます。また、現金出納帳を作成したり、施設からお小遣いが不足の連絡があれば持参しなければなりませんし、入院することになれば入院の契約をしたり、関わっている福祉関係者で情報を共有する会議が開催される場合はそこへの出席も必要です。このようなことは、細かい煩雑な作業でありますが、非常に重要なことです。
当事務所は、これまで様々なケースを受任し、対応のノウハウを蓄積した結果、多くの方の対応が可能な体制を整えることが出来ました。当事務所は、これまでの経験を活かし、専門家として間違いのないよう細心の注意を払い業務をこなし皆様のお役に立ちたい、と業務に取り組んでいますので、ご関心のある方は、是非、一度ご相談ください。
当事務所のサポート
当事務所では、後見業務を行うにあたって発生する様々なニーズに対し、下記のようなサポートをさせていただいています。
(1)後見等開始申立書の作成
成年後見人等を選任してもらうためには、裁判所へ後見等開始申立書を作成して提出する必要があります。申立書には、本人や財産の状況をまとめた書類やその裏付けとなる書類の写しを提出します。裁判所へ行くと、必要な書類の説明等や集める書類の一覧表等をもらうことができますが、慣れていないとどこでどう集めたらよいのか、記載例があってもどう書いたらよいか、戸惑う方が多いようです。
当事務所では、書類の作成から収集まで、一連の作業をサポートし、スムーズに申し立てに結び付けるお手伝いをさせていただきます。
(2)成年後見人等の就任
すでに記載させていただいたとおり、成年後見人等に就任すると様々な業務をこなす必要があります。当事務所における処理量を見ていると、サラリーマンの人が同様のことを自分の仕事をこなしつつ成年後見人等の業務もこなすのは、非常に大変だと実感しています。ご本人様と遠く離れて暮らしている場合はなおさらです。そのため、当事務所では、諸般の事情により成年後見人等になる適任者がいない場合は、積極的に成年後見人等へ就任することをお受けしています。
なお、当職が成年後見人等へ就任した場合の費用は、裁判所が決定した金額をご本人様の財産からいただくことになりますので、皆様にご負担が発生することはありません。ご本人様に財産がない場合も、同様に他の人に請求することはありませんので、ご安心ください。もし、ご自分で成年後見人等に就任することに不安がある場合は、一度ご相談ください。
(3)任意後見契約締結のサポート
任意後見契約は、公証人役場で公正証書を作成する必要があります。当然、公証人役場で相談に応じていますが、当事務所においても事前のご相談をお受けしています。任意後見契約は、あくまで契約ですので細かい点まで理解した上で、納得して契約をする必要があります。そのため、当事務所では、公証人役場でスムーズに任意後見契約の締結ができるように、任意後見契約の案の作成から内容の説明、公証人役場との連絡調整まで、任意後見契約を締結するためのサポートをさせていただきます。
(4)後見業務のサポート
成年後見人等に就任すると、書類の管理やお金の管理を行う必要があります。普段から帳簿をつけることに慣れている人はストレスを感じないと思いますが、帳簿をつけたことがない人にとっては、非常にストレスの感じることと思います。そのため、当事務所では、現金出納帳、財産目録の作成、報告書の作成等、実際に後見業務を行ってい成年後見人等の皆様を書類の作成を通してサポートさせていただいています。
後見制度の種類
上記のとおり、障がいや認知症等により、自分で正しい判断や意思表示が出来ない場合は、自分で自分の財産の管理や施設への入所契約を委任することが出来ません。このような場合に本人の権利を守るために後見制度が設けられています。
後見制度は、大きく次の2種類に分類されます。
(1)成年後見制度
既に認知症を発症していたり、精神障がいを負っているために、自分で正しい判断をすることが出来ない人が利用できる制度です。本人や4親等内の親族等が裁判所に申し立てをして、成年後見人等を選任してもらいます。判断できる能力に応じて、①補助②保佐③後見の3類型が定められています。
(2)任意後見制度
現在はしっかりしているが、将来、認知症等により正しい判断が出来なくなったときに備えて、今のうちに後見人になってもらいたい人と、任意後見契約という契約を公証人役場にて締結しておく制度です。
報酬・費用
手続 | 費用 | 報酬(税込) |
総額(例) |
後見等開始 申立書作成 |
■収入印紙等 7,150円 (後見開始の場合) |
110,000円~ (打合せ5回まで) |
117,150円 (打合せ3回・書類は全てお客様がご用意した場合) |
後見等事務 報告書 |
- | 55,000円~ |
55,000円 |
任意後見契約原案作成 | ■公証人報酬 | 110,000円~ (公証人との打合せ・作成時の立会を含む) |
110,000円 |
戸籍等 書類取得 |
■戸籍 450円 ■登記されていないことの証明書 300円 |
1通 1,100円 |
1,550円 (戸籍1通取得) |